第37話『誕生』
教えを受ける側から、授ける側へ・・・・・・。
新米教導師・エリンの日々が始まりました。といっても、出産間近のリランの世話をしながらということもあるので、半分は学童の頃の延長線上ではあるのですが・・・・・・。
そんなところへ入舎してきた新入学童の中に、人一倍勉強熱心な女の子がいました。名前はシロン。父親も二人の兄も揃って王都のタムユアン学舎で教導師として教壇に立っているという教導師一家の中にあって、向学心と男尊女卑の間に振り回されて心に影を落としたまま、カザルムへとやってきた模様です。しかもカザルムへの入舎を志望した動機が「誰にも負けないくらい勉強をして、誰からも認められる教導師になりたい」という、一歩間違えたら非常に危ういものだったのです。その典型的な思考パターンに、「教科書に書いてあること」が全てだという錯誤に気づいていなかったのです。
物事を学ぶにあたっては、教室での座学も大切ですが、学問のジャンルによっては実体験を通して身体の五感を駆使することで初めて得られる知識も大切になってきます。しかし、12歳そこそこの女の子の行動範囲には自ずと限界があります。五感で体験しようとしても王都という都会暮らしではそういう機会もなかったのでしょうし、まして「女は早く結婚するのが一番の幸せ」と信じてやまない父親の許では家の中にある書物がシロンにとって唯一の『教導師』だったのでしょう。
そんなシロンだから、エリンに対してもついつい突っかかってしまうのです。
ですが、エリンとリランの様子を見たことでシロンの心に変化が現れます。
「人と王獣とが分かり合えるなんて、本に書いていない・・・・・・!?」
本に書かれていなかった現実を目の当たりにして、シロンは混乱します。当然、その思いはエリンに対して「ずるい」という、制御できない感情となってあふれるわけなのですが、丁度リランが産気づき、話は一気に転がりました。
身を悶えさせながら出産しようとするリラン、一心不乱にリランを元気付けるエリン、その様子にシロンの心の影は消え去り、リランが新しい命を無事に産み終えるとともにシロンも新しく生まれ変わったのです。
それにしても、シロンって何だかんだといいながら、結果的に特別課外授業を受けた格好になるんですよね。ある意味、贅沢かも。
【今回の『次回予告』】
久々のエサルです。が、リランが赤ちゃんを出産したという知らせが真王・ハルミヤの耳に入り、喜び極まったハルミヤがカザルムへの行幸をダミヤに手配させてしまいました。
無論、この時点ではエリンの存在など知る由もないハルミヤ。この行幸が彼女と、リョザ神王国に嵐を呼び込むことになるとは、原作を読破した者しか知る由がなかったのです。
来週から、話は劇的に動く(はず)ことになります。
ではまた。
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